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契約書作成上の注意


課題

提案活動をしていたところ,相手方から「契約書のドラフトを提出しろ」と言われた。どんなことに注意すればよいか?

前頁では,契約書を作成する理由をみてきました。
次に,契約書を作成する際の注意点をみていきましょう。
システム開発業務委託契約書を作成する場合,一から書き起こすことはあまりなく,過去の契約書や,経済産業省のモデル契約書(注1) を参照する場合が多いと思います。
その場合でも,以下に述べる注意点は同じです。

まず,前頁のポイント4で指摘したように,将来起こりうる不測の事態を予測し,それに対する対処方法を考えなければなりません。
それには法務部や弁護士の力のみでは不十分で,現場をよく知るマネジャーや担当者の協力が不可欠です。
私たちは,複雑な契約や前例のない契約に直面した場合,関係者が集まって,「こういう場合はどうだ?」などとブレーンストーミングを行うことがよくあります。 

ポイント1  現場・法務担当など,関係者の知恵を集めてリスクの洗い出しや,ヘッジ手段の検討を行う


契約条項を検討していると,自社にとって有利な条項,不利な条項が出てきます。
有利な条項はできるだけ包括性をもった形式にするとよいでしょう。
例えば,自社が開発を担当し,その過程で生じた知的財産権を自社に帰属させたいという場合を想定します。
その場合,「特許権,実用新案権,意匠権は,乙に帰属するものとする。」とするのではなく,「特許権,実用新案権,意匠権その他の知的財産権は,乙に帰属するものとする。」とすることにより,包括性を持たせられます。

逆に,不利な条項については限定的な形式がよいということになります
例えば,開発時にはユーザから種々の情報が提供されることになりますが,厳格な機密保持義務を負う範囲が広くなりすぎると,管理の負担が増すことになります。
そのような場合,機密情報の範囲を「甲から提供される本業務に関する一切の情報」としてしまうのではなく,それに続けて「甲から提供される本業務に関する一切の情報で,秘密である旨が書面上に明記されたもの」とする方法が考えられます。 

ポイント2  有利な規定は包括的に,不利な規定は限定的に規定する



契約交渉の過程では,上記のように自社の都合のいい主張ばかりが認められるとは限りません。
互いに譲歩しなければならない場面もあるでしょう。
そんなときに,五月雨式に自己に有利な条項の追加をお願いしているようでは,相手方の信頼を得ることができません。
契約交渉も長期化してしまいます。

こちら側が契約書の原案を提出する場面では,最初の契約案で言いたいことを書き尽くすことが重要です
逆に,相手方から契約案をもらう立場であれば,最初の返答で言いたいことを主張すべきです。 

ポイント3  契約書を作成する場合,最初に言いたいことをすべて書く



ポイント1で指摘したように,契約書作成ではさまざまな不測の事態を想定しなければなりません。
例えば,万一,トラブルが発生し,相手方に損害が発生した場合を検討してみます。
その原因が自社にあれば損害賠償義務を負うことになりますが,トラブルの原因がどちらにあるのかを証明することは実はかなり難しいことなのです。

そこで,相手方が,自社に帰責事由(法的に責任を負うべき理由)があると証明した場合に限って損害賠償義務を負うという定め方をする方法があります。

逆に,自社に有利な条項を作ったとしても,それが適用される要件を証明できなければ絵に描いた餅に終わってしまう可能性もあるのです。 

ポイント4  立証責任を意識



わざわざ契約書という文書を作成するのですから,一般には当事者間で合意したことはすべて契約書に盛り込まれているのだろう,と考えられます。
逆にいえば,契約書に書かれていないことについて,「○○ということに合意していた」と主張しても,最終的には裁判所がそれを認めてくれる可能性は低いといわざるを得ません。

したがって,「システム課長さんから納品物にはユーザ操作マニュアルをはずしてもよい」というメールが来た,などと安心するのではなく,契約書や,そこから参照される納品成果物一覧などの文書の変更も忘れないようにしましょう。 

ポイント5  契約書を作成した以上,当事者間で権利・義務を発生させる事項はすべて書く



そのほかにも個別の事情,契約の内容に応じて注意すべき点はたくさんあります。
判断に迷ったら弁護士に相談してみましょう。
また,既存の契約書を流用する場合でも,必ずその中身を納得して使うことにし,意味がわからない条項については弁護士にたずねてみましょう。


    
(注1) 2007年経済産業省報告書に掲載されているモデル契約「ソフトウェア開発委託基本モデル契約書」
  http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/softseibi/#05


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