システム開発の途中でユーザから契約が解除されるとどうなるのか?
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(登場人物)
X部長:システム開発会社B社のソフトウェア開発本部長 Yマネジャー:A社の開発プロジェクトを担当するマネジャー
X 「最近,A社の営業支援システム開発プロジェクトが火を吹いているそうじゃないか。」
Y 「当社の立て直しプランが承認されなければ,来週にでも引き揚げさせようかと思っています。」
(総務課のZさんが,「X部長,A社から内容証明郵便が届きました。」といって持ってきた)
X 「おい,大変だ。A社が契約を解除するといっているぞ。支払済みの内金まで返せと書いてある。協力会社からの請求書も届いているというのに・・。」
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システム開発業務委託契約が解除されると,報酬の一部が内金として支払われていた場合には,ベンダは利息付で返還しなければなりません。その場合,ユーザの下にあるドキュメントやプログラムの一部を返還するよう求めることができますが,当然,報酬を請求することはできません。
さらには,契約解除によってユーザに生じた損害を賠償しなければならない場合もあります。
ベンダにしてみれば,それまで投下したエンジニアの費用や,外部に委託した費用を回収できないばかりか,損害賠償まで請求されては,まさに踏んだり蹴ったりの可能性があるわけです。
しかし,契約はユーザから一方的に解除できるわけではありません。
ユーザからシステム開発業務委託契約を解除できるのは,以下の4つのケースが考えられます。
1.契約書に記載された解除事由に該当する場合
2.ベンダに債務不履行(納期遅延や完成不能)がある場合
3.ユーザが損害を賠償して解除する場合
4.完成したシステムに重大な不具合がある場合
ここでは,契約書には書かれていないケースとして,2(ベンダの債務不履行)を取り上げます。
2のケースの典型例は,ベンダが期限までに成果物を納入しない場合(履行遅滞といいます。)や,何らかの理由でシステムを完成させることができなくなった場合が挙げられます。いずれの場合も,ベンダ側にその原因(帰責事由といいます。)がある場合でなければなりません。
システム開発業務委託契約におけるベンダの義務は,システムを完成させることにありますが,それが達成できなかった原因を探ると,プロジェクトマネジメントが不十分であった,というところにたどり着くことが多いようです。
プロジェクトマネジメント義務を果たす責任は,ベンダ,ユーザのどちらにあるのかが問題になりますが,過去の裁判例では,契約書に特別の定めがなくとも,第一義的にはベンダがプロジェクトマネジメント義務を負うと判断しています(下記参照)。
| 「(ベンダは)常に進捗を管理し,開発作業を阻害する要因の発見に務め,これに適切に対処すべき義務を負う。」 (東京地裁平成16年3月10日判決) |
しかし,現実のプロジェクトでは,プロジェクト遅延の責任が常にベンダにあるともいえません。システム開発においては,ベンダとユーザが互いに協力し合わないと,前に進まないのは明らかです。
そこで,上記の裁判例では,ユーザについても,
| 「システム開発のために必要な協力をベンダから求められた場合,これに応じて必要な協力を行うべき契約上の義務を負っていた。」 |
ただし,紛争に発展した段階で「プロジェクトマネジメント義務」を果たしていたことを証明するのは容易ではありません。そこで,普段から議事録,課題管理の記録を残すことが求められます。言うまでもなく,これらの記録を残すことは,紛争回避という後ろ向きの理由に限られず,プロジェクトの円滑な推進にも貢献するのではないでしょうか。
しかし,現実にプロジェクトマネジメント義務を怠ったかどうか,プロジェクト遅延の責任はベンダにあるか,などは容易に判断できません。
ユーザが契約を解除したい場面においては,これらの判断を誤ると,解除の意思表示は無効とされ,逆にベンダから損害賠償を請求されることもあり得ます。
また,解除を通知された場合も,解除の有効性いかんによってその後の対応が変わります。
したがって,紛争を回避するためにも,プロジェクトの大幅な遅延などが生じた場合には,今後の対応について弁護士に相談すべきでしょう。