情報システム,ソフトウェア,ネットビジネスなどITに関する法律問題を鮫島正洋が解決!

不正ユーザの強制退会

課題

規約に違反する行為を繰り返すユーザがいるが、規約に基づいて強制退会してしまっても問題ないか?

ケース

(登場人物)
X部長:A社のネット事業開発部長
Yさん:X部長の部下

「新サービスの開始から1年たった。だいぶわれわれのサイトの認知度も上がってきた。しかし,Yくん,最近だいぶ疲れているようだが。」
「はあ。問題会員がおりまして・・。他の会員を侮辱するようなコメントをつけまくってるんです。『こいつをなんとかしてくれ』というクレームもたくさん来ていまして。さっさとこの会員のIDを削除してしまおうかと思うのですが,ホントにやっちゃっていいのかな,と思うと・・」
「確かに,利用規約上は退会させられるようにも思うが」


コミュニティサービスなどでは,上記のように他人の名誉を毀損したり,プライバシーを侵害したり,著作権を侵害したりするような情報が発信されることがあります。
これらの行為を行った利用者は,権利を侵害された第三者との関係で法的責任(損害賠償義務など)を負う場合があります
事業者も,そのような状況を知りながら放置した場合,事業者として被害者に対し,法的責任を負うことになりかねません。

したがって,事業者としては,他人の権利を侵害する情報を削除し,発信した会員を強制的に退会できるようにしておくべきでしょう

さらには,違法とまではいえなくとも,サービスのコンセプトやポリシーに著しく反するような情報が発信されることは好ましくありません。
そのために,一定の情報の発信を禁止したり,事業者の裁量によって削除したり,利用者を退会させたりできる規定を用意することが望ましいといえます。

しかし,いくら事業者に裁量があるといっても,情報が削除されたり,退会させられる利用者にとってみれば,自らの表現行為が制限されることになりますから,逆に当該利用者から責任が追及されるおそれもあります。
裁判所も,制限を受ける利用者の立場を考慮し,規定を利用規約の文言どおりに運用することについては,否定的な立場をとった裁判例もあります(下記裁判例参照)。

「会員に対する本件契約の解除は当該会員がネット上で築いてきたコミュニケーションを完全に失わせるものであることなどの本件契約の性質にかんがみると,会員契約の解除の効力につき判断するに当たっては,会員に形式的に当該事由に該当する行為があればそれだけで当然に事業者に契約を解除することが許されるものということはできず,会員の当該事由に該当する行為のため,事業者において当該会員との会員契約を継続することが困難であると判断することにつき合理性を肯認することができる場合にのみ,その解除が許容されるというべきである。」                                     (東京高裁平成12年1月19日判決)

要するに,解除することによって受ける会員の不利益,②会員が行った行為の内容,③会員を存続させることによるサービス全体に及ぼす影響など,さまざまな事情を考慮しなければならない,ということです。

会員間のトラブルは,双方の利害が対立し,間に立つ事業者にとっては常に悩ましい問題を生じさせます。規定どおりに運用することが第一ですが,削除,解除などを行う際には,充分に慎重な検討をし,判断に迷う場合には弁護士に相談してみましょう。



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