ライセンサの破産
課題
ソフトウェアを使用していたところ,ライセンサが破産しそうだという噂を耳にした。使用を継続することはできるのか?
ケース
(登場人物) P部長:B社のシステム部長 Qさん:B社の営業担当
| Q |
「P部長,スーパーXMLを当社にライセンスしているA社なんですが,このところの不況の影響をまともに受けて,そろそろ危ないと聞いてます。」 |
| P |
「われわれの取引先とのデータ交換に関しては,今やスーパーXMLが不可欠なのだが。ライセンサであるA社が破産したら,われわれはスーパーXMLを使い続けることができなくなってしまうのか?」 |
| Q |
「どうなんでしょう・・弁護士に相談してみます。」 |
|
2008年の後半以降,ソフトウェアの業界においても,倒産が増えているといわれます。
一般に「倒産」と呼ばれているもの中には,「破産」や「民事再生」などがありますが,ここでは,会社の事業が継続されない,「破産」の場合を取り上げることにします。
法人に関して破産手続が開始されると,通常は破産管財人が選任されます。
そして,破産管財人は,まだ双方ともに未履行の契約(これを「双方未履行の双務契約」といいます。)を継続するか,解除するか選択できます(破産法第53条1項)。
ソフトウェアの使用許諾契約は,無償の場合や,すでに対価を全額支払っている場合を除いて,
「双方未履行の双務契約」に該当します。破産管財人は破産会社の資産を換価して債権者に配当しなければなりませんから,使用許諾契約を解除して別の会社にソフトウェアの権利を譲渡してしまうかもしれません。
使用許諾契約が解除されてしまったら,
それ以降に当該ソフトウェアを複製したり,改変したりする行為は,著作権侵害となります。破産管財人が,第三者に当該ソフトウェアの権利を売却した場合には,その譲受人(新たな権利者)から,著作権侵害として訴えられる可能性もないとはいえません。
では,そのような問題を回避するためには,どうすればよいのでしょうか。
著作権の場合は,特許と異なり,利用権を登録する制度がないため,事前に回避する有効な手段はないのですが,事後的な手段としては,以下の2つが考えられます。
1. 第三者へ譲渡された場合,
その譲受人から再度,ライセンスしてもらう 2. 第三者に譲渡される前に,
当該ソフトウェアの著作権を買い取る
まず,1の方法ですが,譲受人がライセンスしてくれるという保証はありません。
もし,B社の競合企業であれば,
断られるか,非常に高いライセンス料を請求される可能性もあります。
また,
許諾を得られるまでの間は,非常に不安定な状態が続きますので,できれば1の方法は避けたいところです。 そこで,破産管財人に連絡を取って,2の交渉をすべきだということになります。
ただ,この場合は,権利者(今回のケースでいうA社)が,
複数の者に対してライセンスしていた場合には,特定のライセンシーに対して譲渡してしまうと,他のライセンシーとの関係で問題になります。
したがって,そのような場合は2の方法もあまり適当ではないことになってしまいます。
1も2も困難な場合には,1の亜流として,
適切な譲渡先(A社の同業者が考えられます)を探し出してきて,既存の使用許諾と同条件で許諾してくれるよう,交渉するという方法も考えられます。
この場合の譲渡先候補をC社としますと,C社とすれば,はじめからお客さんがついている状態でソフトウェアの権利を買うことができるわけですから,その対価や,マーケットの大きさによっては有利な話になるとも考えられます。
保守に関する技術的な問題は,A社のエンジニアを雇用することでカバーできる可能性もあります。
ポイント ライセンサが破産すると権利関係が不安定になる。できるだけ早めに行動する