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著作権法に基づく救済


ケース[再掲]

(登場人物)
X部長:A社のパッケージソフト事業部長
Y課長:A社のパッケージソフト事業の開発担当課長 

「X部長,最近発売されたB社の営業支援システムβですが,当社の製品αに画面や機能がそっくりなんです。開発陣はみな『マネされた』と怒っています。」
「マネだって言っても,どちらも営業支援システムなんだったら,どうしても画面や機能が似てしまうのはある程度は仕方がないだろうなあ。何か資料はないかな。」
(B社のウェブサイトでβのオンラインデモを見てみる)
「これはただ単に『似ている』というレベルを超えているような気がするな。ボタンの配列や,表示テキスト,画面遷移などもほとんど同じじゃないか。」


上記のケースで,著作権法に基づく差止や損害賠償を請求できないかどうか検討してみましょう。

著作権法によれば,著作権者は著作権法第21条から第28条に定められる権利を独占的に利用することが認められ,著作権者以外の者が,著作権者に無断で利用した場合には著作権侵害となります。
ソフトウェアで一番問題になりやすいのは,第21条の複製権です。

今回のケースでは,B社が,A社のαの何を「模倣」したととらえるかによって,主張が異なってきます。
ひとつには,「表示画面」を著作物ととらえた上で,複製権侵害になるという主張です。
もうひとつは,ソースコードがプログラム著作物であるとして,同じく複製権侵害になるという考え方です。 


表示画面の著作権を侵害するとした場合


画面が似ているというだけで,即複製権侵害になるわけではありません。今回のケースとよく似た事例(サイボウズ事件,東京地裁平成14年9月5日判決)などを検討すると,裁判所では次のような手順で判断がなされると考えられます。

1.問題となっている二つのソフトウェアの表示画面を比較して,共通部分を抽出する

2.共通部分について,創作的な特徴があると認められるかどうか判断する


ソフトウェアの模倣が問題となっている事例では,1の共通部分が存在しないということは考えにくいでしょう。
問題は,その部分に「創作的な特徴」があるといえるか,という2の部分です。

上記のサイボウズ事件では,スケジュール管理画面が問題となりましたが,同種のソフトウェアにはありふれた構成(縦軸に担当者や部署が並び,横軸に1週間ほどの幅をもって日付が表示されるなど)で,表現上の創作的特徴が共通するとはいえないとしました。

見た目が似ていたとしても,実現したい機能からすると必然的にオブジェクトの配置等が似てしまうようなケースでは,複製権侵害の主張は認められにくいと考えられます。 


プログラムの著作権を侵害するとした場合


では,プログラムの著作権を侵害したという主張については,どのように判断されるのでしょうか。
この点についても,過去の裁判例がありますが(東京地裁平成19年11月28日判決等),上記の表示画面と同様の手順,すなわち,1.共通部分の抽出と,2.その部分の創作性の有無で判断が行われています。

著作権法は,「表現」を保護する法律ですので,アイデアやアルゴリズムが共通しているだけでは足りず,プログラマによって表現された「ソースコード」を比較することになります。
いくらソフトウェアの「機能」が似ているとしても,それは著作権法の範囲では保護されないことになります。
上記判決でも,裁判所は次のように述べています。

原告は,本件プログラムについて,機能面での特徴を指摘するのみで,被告らが使用するプログラムとの対比及びその同一性についての具体的な表現上の創作性について何も主張するものではないから(中略)同一性の有無について主張・立証がないものといわざるを得ない。

市場に流通するソフトウェアは,通常は,ソースコードは明らかになっていないため,そもそも対比することが極めて困難になります。
ただし,現に相手方が自社のソースコードを持ち出していることが疑わしい事情などがある場合には、証拠保全という手続をとることで,相手方のソースコードを裁判所が検出するということができる可能性もあります。


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