情報システム,ソフトウェア,ネットビジネスなどITに関する法律問題を鮫島正洋が解決!

不競法に基づく救済


ケース[一部修正]

(登場人物)
X部長:A社のパッケージソフト事業部長
Y課長:A社のパッケージソフト事業の開発担当課長 

「X部長,最近発売されたB社の営業支援システムβですが,当社の製品αに画面や機能がそっくりなんです。開発陣はみな『マネされた』と怒っています。」
「マネだって言っても,どちらも営業支援システムなんだったら,どうしても画面や機能が似てしまうのはある程度は仕方がないだろうなあ。」
「これは単なる偶然の一致ではなく,当社のシステムの開発時に協力会社として来ていたC社のSEであるZ氏が1年前にB社に転職したという噂があり,彼がいろいろと資料などを持ち出したという可能性もあるんです。」

類似するソフトウェアを他社が販売しているというケースで,不正競争防止法に基づく差止や損害賠償を請求できないかどうか検討してみましょう。

不正競争防止法は,事業者間での公正な競争を確保するための法律です。
今回,Yさんが指摘していることが事実で,かつ,持ち出した資料などが営業秘密にあたるとすれば,不正競争(注1)に該当する可能性があります。

そして,不正競争に対しては,民事的に差止請求や,損害賠償請求ができるほか,刑事罰(最大で懲役10年)の規定も定められています。
平成15年の改正により,刑事罰の対象が退職者にも拡大されるなど,重罰化や刑罰対象範囲の拡張がなされています。 

具体的に権利化されていないアイデア・ノウハウなどを不正に持ち出したなどというケースの場合,不正競争防止法による保護を受けられないかどうか検討してみる価値があります。 

ポイント 特許権の侵害や,著作物性が認められにくい場合でも,不正競争防止法による保護を受けられる可能性はある



営業秘密とは


問題は,A社から持ち出された情報が「営業秘密」に該当するのか,という点にあります。「営業秘密」とは,法律上の定義(不正競争防止法第2条第6項)によれば,

1.秘密として管理されていること(秘密管理性)
2.事業活動に有用な情報であること(有用性)
3.公然と知られていないこと(非公知性)

が満たされている情報となっています。
争いになるケースでは,2の有用性が問題になることはほとんどなく,また,3についても,ソフトウェア自体が公知になっていたとしても,そのアルゴリズムや内部構造については刊行物で発表している場合などを除いて,公知になっている場合は少ないと考えられますので,通常は1が問題となります。

1の秘密管理性とは,過去の裁判例(名古屋地裁平成20年3月13日判決等)によれば,次のように示されています。

(a) 当該情報にアクセスできる者が制限されていること
(b) アクセスした者にそれが秘密であることが認識できること

さらに,要求される情報管理の程度は,情報の性質,保有形態,企業の規模によって異なるとされています。

電子ファイルの場合は,(a)についてはパスワードやアクセス制限がかけられていることなどが考慮されるでしょう。
ただし,パスワードが設定されていたとしても,それが半ば公開されているような場合(例えば,多くの人に見える場所に書かれているなど)には,(b)を満たさないと判断される可能性があります。
さらに,従業員や協力会社との秘密保持契約の締結の有無や,その運用の実態といった人的側面も考慮されます。

逆に,流出しては困る情報を管理・保有する企業の立場からすると,「営業秘密」として保護されるために,適切な管理が必要になります。
その方法については,上記の点のほか,経済産業省の「営業秘密管理指針」(注2)が参考になるでしょう。
具体的な管理体制の整備,運用状態の検証については,弁護士に相談することをお勧めします。 

ポイント  流出しては困る情報は,適切な管理体制を構築し,適切に運用しなければならない



(注1) 「不正競争」の定義は,不正競争防止法第2条1項に列挙されています。今回のケースは,不正に取得した営業秘密を使用・開示する行為(4号)または,正当に営業秘密を取得した者が不正に使用・開示する行為(7号)に該当する可能性があります。
(注2) 経済産業省「営業秘密管理指針」(平成15年1月30日) 
  (www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/tizai_bukai_7_paper/shiryou_6-2.pdf)


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