商業施設や自動販売機等に設置したビデオカメラによって撮影した映像・画像を利用する際の注意点はありますか。
具体的な人物であることが明らかな映像・画像や、これを数値化して認証や行動のトラッキングを可能としたデータは、個人情報に該当します(個人情報保護法2条1項)。個人情報に該当するデータについては、不適正な態様での取得とならないよう注意しつつ、利用目的の特定と通知・公表等の個人情報保護法上の適切な取扱いが求められます。

商業施設や自動販売機等に設置したビデオカメラによって撮影した映像・画像を利用する際には、プライバシーへの配慮とともに、個人情報保護法の適用に注意する必要があります。

(1)映像・画像は個人情報に該当するか?

具体的な人物であることが明らかな顔が判別できる映像・画像(デバイスへの出力前のデータを含みます)、は個人情報に該当します(個人情報保護法2条1項1号)。また、認証用のソフトウェア等を用いて認証可能なようにされたデータ(用途は認証に限らず、商業施設、公共施設等での人物の照合のためのデータを含みます。)は個人識別符号(同条2項1号)に該当し、これが含まれるデータは個人情報(同条1項2号)に該当します。

また、個人情報を取得した後に、行動ログ(店舗内の動線、購入商品)といったデータのみを取り扱う場合であっても、元の個人情報とIDで連携させる場合や、情報の詳細さから容易に照合が可能な状態である場合には、なお行動ログが個人情報に該当する場合があるため注意が必要です(※1)。

(2)取得する際にはどのような点に注意すべきか?

個人情報に該当する場合、法は不適正な取得を禁止しています(個人情報保護法17条1項)。このため、社会通念上本人が許可しないような場所での撮影といったプライバシーの侵害が認められる態様や、他の利用目的を持ちながら防犯目的であると表示しているような場合には、不適正な個人情報の取得とされる場合があります。

(3)利用目的の通知・公表方法は?

個人情報を取得する場合、個人情報の利用目的を特定し(個人情報保護法15条1項)、あらかじめこれを公表するか、取得後速やかに本人に通知し、又は公表することが求められます(同法18条1項)。

例えば、「カメラで取得した顔を含む映像を録画し、犯罪行為等の防止・発覚時の対応等の監視のために利用します」「カメラで取得した顔を含む映像から顔認識のためのデータを作成・照合によって店内での行動を把握し、滞留場所・時間等の行動履歴を分析して●●のマーケティングに活用します」等といった利用目的とすることが考えられます。

また、その通知・公表方法については、撮影態様、利用目的によって異なります。例えば、防犯カメラによる映像・画像の撮影については、取得状況から録画・監視等の目的が明らかであるため、通知・公表は不要です(同法18条4項4号)。他方、顔認識・認証用のデータによる行動把握、商業利用については取得状況から目的が明らかとはいえないため、通知・公表を省略することは認められません。このため、店舗で顧客の目につきやすい場所に掲示することが考えられます。

※1
映像・画像を記録する媒体がない等の一定の要件の下、単に性別、年代、簡単な行動ログ(店舗内の動線、購入商品)を判断したデータのみ取得する場合には、個人情報保護法の適用がないとされる場合があり得ます。

(弁護士 日置巴美 H29.3.31)