オンラインゲームにおいて,コンプガチャは禁止であるという話題がありましたが,コンプガチャではない通常のガチャを実施する場合には問題はないのでしょうか。
コンプガチャに該当しない場合は,ガチャによるアイテム提供自体については,景品表示法の規制は受けません。ただし,ガチャの設計内容によっては,景品表示法の規制を受ける可能性もあり,個別の事情に応じた確認が必要です。

多くのオンラインゲームでは,いわゆる「ガチャ」と呼ばれるアイテム提供の仕組みが用いられています。「ガチャ」で手に入るアイテムには,ゲーム上で敵と対戦するためのキャラクター・武器・モンスターや,キャラクターを着飾るためのアバターなど,様々なものがあります。

(a)コンプガチャは禁止されている

「コンプガチャ」とは,有料のガチャによってアイテム等を提供し,それらの組合せを完成させることによってさらにレアアイテムを提供するような仕組みのガチャをいいます。

消費者庁の「オンラインゲームの『コンプガチャ』と景品表示法の景品規制について」(平成24年5月18日付け,平成28年4月1日一部改正)によれば,「コンプガチャ」は,景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)において全面的に禁止されている「カード合わせ」に該当するとされています(「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」第5項)。

(b)有料ガチャの場合

では,コンプガチャではなく,有料ガチャ単体については,景品表示法上の問題はないのでしょうか。

景品表示法の規制の対象となる「景品類」とは,

  1. 顧客を誘因するための手段として
  2. 事業者が自己の供給する商品・役務の取引に付随して提供する
  3. 物品,金銭その他の経済上の利益

であって,内閣総理大臣が指定するものをいいます。

平成25年1月9日に出された消費者庁の「インターネット上の取引と『カード合わせ』に関するQ&A」によれば,有料ガチャにより得られるアイテム等は,一般消費者と事業者との間の取引の対象そのものであり,当該取引に付随して一般消費者に提供されるものではないため,上記2の要件を欠くものとして,景品表示法上の規制が及ばないと述べられています。したがって,有料ガチャ単体では,景品表示法上の規制を受けないのが原則です。

もっとも,有料ガチャにも様々な形態があり,「一般消費者と事業者との間の取引の対象そのもの」と評価できるかどうかは個別の事情によって異なり,個別具体的な検討が必要になります。また,有料ガチャの方法や,他のイベントとの組合せによっては,コンプガチャとの線引きが難しいものもあるかと思われます。

また,従来,オンラインゲームにおけるアイテム等については,「経済上の利益」に該当せず,景品表示法の規制対象である「景品類」に該当しないのではないかとの議論も一応ありましたが,上記Q&Aにおいて,アイテム等についても,「経済上の利益」に該当することが明記されるに至り(Q20以下),アイテム等が「経済上の利益」に該当しない(上記3の要件をみたさない)という論拠による景品表示法の規制回避は難しいものと考えます。

(c)無料ガチャの場合

他方,無料ガチャについては,どうでしょうか。

ゲームのプレイ自体も無料,ガチャも無料,有料でのアイテム販売等が一切なし,という場合であれば,「取引」自体が存在せず,景品表示法に基づく規制を受けることはありません。

また,ガチャ自体は無料で,月額課金制でゲームが運営されている場合についても,ゲームの提供自体が取引の対象そのものと評価されるため,ガチャによるアイテム提供や,ガチャにより得られるアイテムの組合せによるレアアイテムの提供も含めて,景品表示法に基づく規制を受ける可能性は低いと考えられます。
ただし,無料ガチャで提供されるアイテムについて,有料アイテムを購入することによりアイテムの入手確率が上がる等の仕組みが用いられている場合には,景品表示法に基づく規制を受ける可能性もありますので,注意が必要です。

(弁護士 高岡晃士 H29.2.26)