プログラムは著作権により保護されると聞きましたが,具体的にどのようなプログラムが保護の対象になるのでしょうか。
プログラムが「著作物」にあたる場合には,著作権法の保護を受けることができます。もっとも,どのようなプログラムでも「著作物」にあたるわけではなく,プログラムの(機能や効率ではなく)表現に個性が認められる必要があります。

(a)どのようなプログラムが著作権法により保護されるのか(著作物性)

著作権法は,効率的な処理方法といった「アイデア」や,優れた「機能」を保護するものではなく,そのような「アイデア」や「機能」を実現するための「表現」を保護する法律です。ある「アイデア」を表すために多くの選択肢が考えられる場合に,作者が選び出した一つの「表現」に個性が認められれば,著作物として保護されます。

ただし,プログラムには,プログラム言語,規約,解法といった技術的な制約があるため,自ずと「アイデア」を実現するための「表現」が限られます。そのように限られた「表現」を著作物として保護すると,事実上「アイデア」の独占を認めることになります。「アイデア」の独占を認めれば,他の人がプログラムを組むうえで非常に大きな障害となるため,このような「表現」は著作物として保護されません。

では,どのような「表現」のプログラムが著作物として保護されるのでしょうか。この点について,知財高判平成24年1月25日判決は次のように述べています。

プログラムに著作物性があるというためには,指令の表現自体,その指令の表現の組合せ,その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性,すなわち,表現上の創作性が表れていることを要する…。

この裁判例は,1.指令をどのように表現するか,2.その指令の表現をどのように組み合わせるか,3.どのような表現順序とするか,といった点にプログラムの「表現」における選択肢があり,これらの選択によって示されたプログラムの「表現」に作者の個性が表れていれば,著作物として保護されるとしています。

プログラムが長く,複雑であれば,通常は上記1~3における選択肢も増えるため,プログラムの「表現」に個性が表れやすく,著作物性は認められやすいでしょう。しかし,いくらプログラムが長く,複雑であったとしても,ありふれた表現がありふれた組み合わせ・順序で並んでいるような場合には,著作物としては保護されません。

(b)著作権が侵害された場合,著作権者は何をすることができるのか

著作権法は,著作権者が著作権により禁止しうる行為を個別に列挙しています(著作権法21条から著作権法28条)。例えば,プログラムをコピーする行為(著作権法21条の複製権),改変する行為(著作権法27条の翻案権),インターネットにアップロードする行為(著作権法23条1項の公衆送信権)などがあげられます。他人がこれらの行為(「利用」行為といいます。)を著作権者に無断で行っている場合,著作権侵害となり得ます。

他方,プログラムを実行するなどの「使用」行為は,著作権者に独占されている行為ではありません。ただし,プログラムの使用者がプログラムを取得した時に,当該プログラムが違法な複製物であることを知っていた場合には,「使用」行為も例外的に著作権侵害とみなされます(著作権法113条2項)。

著作権者は,著作権が侵害された場合に,侵害行為の差止め(著作権法112条1項)や差止めに付随する廃棄等(著作権法112条2項),侵害行為による損害賠償(民法709条)を請求することができます。

(c)プログラムは著作権法以外にどのような法的保護をうけるのか

プログラムは,上記のように著作物として保護を受ける場合のほか,不正競争防止法や特許法により保護を受けられる可能性があります。

プログラムのソースコードが適切に管理されているなどして営業秘密に該当する場合には,不正競争防止法に基づき,ソースコードの使用を差し止め,あるいは損害賠償を請求することができます。(不正競争防止法2条1項4号~9号・6項,3条1項,4条)。

また,(a)で述べたプログラムの効率的な処理方法といった「アイデア」や,優れた「機能」については,特許を受けられる可能性があります。特許権者は,侵害品であるプログラムを使用等する第三者に対し,その使用等の差し止め,あるいは損害賠償を請求することができます(特許法2条3項1号,100条1項等)。

(弁護士 高岡晃士 H29.2.28)