期間限定でお得な商品を販売するキャンペーンを考えています。注文が殺到し、途中で在庫切れになることもあり得ますが、キャンペーン広告に「売切御免」や「在庫がなくなり次第、終了となります」などと記載しておけば問題ないでしょうか。

 景品表示法上、在庫切れの商品や提供を停止した商品について、販売可能であるかのような広告・宣伝を行うと、違法な「おとり広告」に該当するおそれがあります。このような場合に、ウェブページ等において、「売切御免」など、供給量が限定されている旨の表示を併せて行うケースが見受けられますが、このような表示をしているからといって、必ずしも規制を免れる訳ではないということに注意が必要です。


1 景品表示法上のおとり広告規制

 景品表示法は、①「取引を行うための準備がなされていない場合その他実際には取引に応じることができない場合」、つまり、販売しようとする商品の在庫が用意できていない場合等に行うその商品の表示(広告・宣伝等)について、いわゆる「おとり広告」として規制しています(同法第5条第3号、「おとり広告に関する表示」(平成5年公正取引委員会告示第17号))。
 また、在庫がある場合であっても、ある商品について、②「合理的理由がないのに取引の成立を妨げる行為が行われる場合その他実際には取引する意思がない場合」に行うその商品の表示も「おとり広告」として規制されます。

 ※その他、③「取引の申出に係る商品又は役務の供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合」や、④「取引の申出に係る商品又は役務の供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量が限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合」も、各広告・宣伝等が「おとり広告」に該当するとされています。

2 おとり広告に関する処分事例

(1)「在庫がなくなり次第、終了となります」との表示があったにもかかわらずおとり広告であるとされた事例
―平成29年7月27日付け消表対第1074号措置命令―

 セール期間中、セール価格で商品を購入できる旨の広告を行っていたのに、当該期間中、対象商品を準備しておらず、取引できなかったという事案では、キャンペーン広告が行われているウェブページにおいて、
 「在庫がなくなり次第、終了となります」
 「商品によっては在庫がない場合もあります」
 「在庫限り」

 などといった注意書きがありましたが、当該表示は、在庫があることを前提としていたり、在庫がないことは例外であるかのような文言であったことを理由に、商品の準備状況を明瞭に記載したものとはいえないとされ、おとり広告(前記類型①)であると判断されました。

(2)「売切御免」との表示があり、キャンペーン期間開始当初は実際に商品が販売されていたにもかかわらずおとり広告であるとされた事例
―令和4年6月9日付け消表対第744号措置命令―

 キャンペーン期間中、特定の料理を提供できる旨の広告を行っていたのに、当該期間の途中で、対象料理の材料が足りなくなる可能性があると判断したため、提供を停止したという事案では、キャンペーン広告が行われているウェブページやテレビCMにおいて、
 「売切御免」
 「1日数量限定」
 「入荷状況、販売状況により早期完売となる場合がございます」

 などといった注意書きがありました。
 また、当該キャンペーンは、「9月8日(水)~9月20日(月・祝)まで」などと表示しており、実際にも、令和3年9月8日~同月13日までは対象商品を提供していました。
 しかし、当該表示は、あたかも、令和3年9月8日から同月20日までの間、対象料理を提供するかのような表示であるにもかかわらず、実際には当該期間の途中から対象料理を提供しなかったことから、合理的理由がないのに実際には取引する意思がなかった場合の対象料理についての表示であるとして、おとり広告(前記類型②)であると判断されました。

3 まとめ

 以上の処分事例をまとめると、実際には商品の在庫が無いにもかかわらず、当該商品の広告・宣伝を行うことは、原則として許されないといえます。
 そして、この場合に、「売切御免」、「在庫がなくなり次第、終了となります」のような表示を併記したとしても、当該表示は、あくまでも在庫が一定数存在することが前提で、在庫切れは例外であるかのような表示であることから、やはり許されないと考えられます。
 また、表示時点で在庫が存在するとしても、キャンペーン期間中に在庫切れになり、あるいは途中で提供を停止しているにもかかわらず、なお当該商品の広告を継続することも、おとり広告に該当するおそれがあります。
 この場合、事業者としては、たとえ「在庫がなくなり次第、終了となります」、「売切御免」のような表示を行っていたとしても、途中で在庫切れ・提供停止となった旨を当該広告に追記し、あるいは、当該広告を終了させるなどして、一般消費者が在庫ありと誤認することがないように対応すべきであると考えられます。
 なお、商品の販売数量が著しく限定されている場合には、当該販売数量を具体的に示す必要があると考えられ、単に「売切御免」とだけ表示しているのみでは、おとり表示(前記類型③)であると判断される可能性もありますので、この点も含め、慎重に広告・宣伝内容を決定する必要があります。

2022年8月1日