当社の運営するECサイトでは、不定期に同じような値引きキャンペーンを行っています。このようなキャンペーンの繰り返しは問題となるでしょうか。

値引きキャンペーンにおけるセール価格表示を行う場合、通常価格、つまり過去の販売価格を比較対象価格とすることが多いですが、このようなケースは、いわゆる二重価格表示に該当します。キャンペーンが高頻度で繰り返される場合には、このような二重価格表示が不当表示に該当し、景品表示法に違反するおそれがあります。


1 過去の販売価格を比較対象とする二重価格表示とは

 景品表示法においては、事業者が、自己の供給する商品・サービスの価格等について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示を行うことを規制しています(同法5条2号。いわゆる「不当表示」の一類型である「有利誤認表示」。)。
 事業者が自己の販売価格に当該販売価格よりも高い他の価格(以下「比較対照価格」といいます。)を併記して表示するいわゆる「二重価格表示」は、それ自体直ちに不当表示に該当するわけではありませんが、販売価格の安さが不適正に強調され、一般消費者に実際よりも得であるという誤認を与える場合、不当表示に該当するおそれがあります。
 例えば、値引きキャンペーン等により期間限定で販売価格を引き下げる場合等に、通常価格、つまり過去の販売価格を比較対象とする二重価格表示が行われることがあります(例:「通常価格●●円のところキャンペーンにより△△円で販売」)。
 この場合、消費者庁によれば、「同一の商品について最近相当期間にわたって販売されていた価格を比較対照価格とする場合には、不当表示に該当するおそれはないと考えられる」とされています。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_35.pdf

 そうだとすると、ある値引きキャンペーンAと、次回の値引きキャンペーンCとの間の通常価格期間Bが、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」といえれば、「通常価格(B期間中の価格)円のところキャンペーンCにより(C期間中の価格)円で販売」という二重価格表示は問題がないということになります。
 そこで、当該「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とは具体的にどの程度の期間であるかという点が問題となります。

2 「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とは

 一般的には、キャンペーン開始時点からさかのぼる8週間中に、通常価格(比較対照価格)で販売されていた期間が当該商品が販売されていた期間の過半を占めているときには、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」と見て良いものと考えられています。
 ただし、この場合であっても、当該価格で販売されていた期間が通算して2週間未満の場合、又は当該価格で販売された最後の日から2週間以上経過している場合においては、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とはいえないものと考えられます。
 具体的なキャンペーン期間における二重価格表示を例示すると、以下のように考えられます。

<例:キャンペーンC期間中の二重価格表示>
 4月1日~4月14日 キャンペーンA(値引き価格★★円)
 4月15日~5月26日 通常価格の販売期間B(通常価格●●円)
 5月27日~6月9日 キャンペーンC(値引き価格△△円)
※キャンペーンAの前も相当期間にわたって通常価格の販売期間が確保されていたと仮定。
※キャンペーンCにおいて「通常価格●●円のところキャンペーンにより△△円で販売」との二重価格表示を予定。

 この場合、上記の考え方に照らすと、キャンペーンC開始時点(5月27日)からさかのぼる8週間(4月1日~5月26日)では、通常価格の販売期間B(4月15日~5月26日)が、当該商品が販売されていた期間の過半を占めています。また、通常価格の販売されていた期間は上記のとおり通算して2週間以上あり、また、当該価格で販売された最後の日(5月26日)から2週間以上経過していません。
 したがって、上記通常価格は、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」の表示といえ、一般的に上記二重価格表示は不当表示に該当しないと考えられます。
 もっとも、前掲消費者庁ガイドラインには、より詳細な考え方が掲載されており(例えば、上記通常価格の「相当期間」とは、必ずしも連続した期間に限定されるものではないなど。)、また、上記判断基準についても、「当該価格で販売されていた時期及び期間、対象となっている商品の一般的価格変動の状況、当該店舗における販売形態等を考慮しつつ、個々の事案ごとに検討されることとなる」とされており、絶対的な基準ではないことがわかります。以上のことから、実際にキャンペーン期間の設計を行う場合には、専門家にご相談することをお勧めいたします。

2023年12月20日