インターネット通販やスマホアプリ課金に際して適用される特定商取引法が改正されたと聞きました。事業者には、具体的にどのような対応が求められるのでしょうか。

 改正特定商取引法(以下「特商法」といいます。)が令和4年6月1日から施行され、以下のとおり、インターネットを利用した通信販売やスマホアプリ課金(以下「インターネット通販」といいます。)を行う事業者は、最終確認画面(顧客が最終的な注文内容の確認を行い、画面内に設置された申込みボタン等をクリックすることにより契約の申込みを完了させるような画面のこと。)において、特定の事項を表示する義務が課せられます。


1 事業者の義務について

 特商法12条の6第1項に基づき、通信販売(以下では主にインターネット通販を想定しています。)を行う事業者は、最終確認画面に以下の事項を表示させる義務を負います。
 なお、従来から事業者には、商品の紹介ページ等の「広告」表示においても似たような表示義務が課せられていますが(特商法11条)、「広告」と「最終確認画面」は異なる概念ですので、仮に広告において表示されている事項であっても、最終確認画面にも別途表示する必要があります。

【表示事項】
①商品等の「分量」
②商品等の「販売価格・対価」
③代金等の「支払の時期・方法」
④商品等の「引渡・提供時期」
⑤「申込期間」(期限のある場合)
⑥契約の「申込みの撤回、解除に関する事項」

2 表示に関する留意点について

(1) 表示方法について
 最終確認画面に表示しなければならない事項があるといわれても、インターネット通販においては、表示される端末により画面の大きさや表示形式が異なるとか、ECモール等では販売条件が異なる複数の商品がまとめて表示されるなど、最終確認画面に全ての説明を網羅的に表示すると、消費者にとってかえってわかりづらくなることが想定されます。
 そこで、消費者庁は、以下のとおり、「期間限定商品 詳細はバナーをクリック」などとして、消費者にわかりやすい形式でバナーやリンクを設置し、リンク先に詳細を表示させる方法等でも良いとしています。

消費者が明確に認識できることを前提として、最終確認画面に参照の対象となる表示事項及びその参照箇所又は参照方法を明示した上で、広告部分の該当箇所等を参照する形式とすることは妨げられない。
消費者庁「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン」から抜粋。

(2) 各表示事項について
①分量
 商品等の態様に応じてその数量、回数、期間等を表示する必要があります。
 また、定期購入契約の場合、各回の分量のみならず、引き渡される商品等の総分量の把握のため、引渡しの回数(無期限の場合や自動更新がある場合はその旨)も表示する必要があるとされています。
②販売価格・対価
 販売価格に送料が含まれない場合には、販売価格と併せて送料も表示する必要があります。
 また、複数の商品を購入する場合や定期購入契約の場合には、支払総額について(一定の無償期間後に自動で有償契約に移行する定期購入契約はその旨及び移行時期等)も表示する必要があります。

③支払の時期・方法
 定期購入契約においては、各回の代金の支払時期についても併せて表示する必要があります。

④引渡・提供時期
 定期購入契約においては、各回の引渡時期についても併せて表示する必要があります。

⑤申込期間
 申込期間を設ける場合は、これを適切に表示する必要があります。
 これに対して、
・「期間」に該当しない何らかの取引条件(例えば、個数限定販売等)がある場合、当該条件を表示する義務はない
・申込みそのものではなく、価格その他の取引条件(価格のほか、数量、支払条件、特典、アフターサービス、付属的利益等)に関する期間の限定がある場合(例えば、継続して販売している商品について、一定期間値下げを行う期間限定セール等)、当該限定を表示する義務はない
とされています。

⑥申込みの撤回、解除に関する事項
 契約の申込みの撤回又は解除に関して、その条件、方法、効果等について適切に表示する必要があります。前記(1)のとおり、これらの事項をリンク先等に詳細表示する方法でもよいとされていますが、消費者庁は、以下のとおり、特に、消費者が想定しないような限定がなされる場合には、最終確認画面に明確に表示することを求めています。

解約に関するトラブルの状況に鑑みれば、解約方法を特定の手段に限定する場合、とりわけ、消費者が想定しないような限定がなされる場合(例:電話した上で更にメッセージアプリ等を操作する必要がある、消費者から追加の個人情報を提出しなければならない等)や、解約受付を特定の時間帯に限定している、消費者が申込みをした際の手段に照らして当該消費者が容易に手続を行うことができると考えられる手段での解約連絡を受け付けない等の場合には、当該内容については、特に消費者が明確に認識できるよう、リンク先や参照ページの表示に委ねるのではなく、広告画面はもとより、最終確認画面においても明確に表示することが必要である
前掲ガイドラインから抜粋。

3 おわりに

 消費者庁の実施したパブリックコメントでは、「事業者は、インターネット通販システムの改修等への対応が必要となるが、準備期間が短く、対応できない可能性がある」などといった意見が多数寄せられています。
 ところが、これに対し消費者庁は、最終準備画面における適切な表示の重要性を強調したうえで、

最終確認画面における申込み内容の表示は、現行法令で既に義務付けられているものです。施行期日(改正法の公布から1年以内)については、可能な限り十分な準備期間を確保する観点から、……令和4年6月1日施行としています。
消費者庁「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン(案)に関する意見募集の結果等について」から抜粋。


と手厳しい考え方を示しています。つまり、改正法は十分な準備期間を確保しているという前提のもと、施行日以降は、事業者の対応遅れを待ってくれないということです。  また、上記で紹介したガイドラインは、最終確認画面の表示方法や表示事項について、相当詳細に解説しているものの、あらゆるインターネット通販を想定しているわけではありません。「自社の通販システムにおいて、具体的にどのように表示すればよいのか?」などの判断については、専門家に相談することをお勧めします。

2023年12月15日