CtoCのプラットフォームサービスを提供しようと考えています。決済には当社が関与する予定ですが,注意すべき点がありましたら教えて下さい。

プラットフォーマーが間に入って単に代金の受領及び引渡しを行うというスキームは「為替取引」に該当するため資金決済法に基づく登録等が必要になります。他方,プラットフォーマーが売主を代理して買主から代金を受領し,これを売主に引渡す「収納代行」と呼ばれるスキームの場合,それが法の趣旨を潜脱するようなものでない限りは資金決済法等の規制の対象にはならないと考えられます。

1 「為替取引」を行うことができるのは銀行や資金移動業者のみ

「為替取引」とは,「顧客から,隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて,これを引き受けること,又はこれを引き受けて遂行すること」を意味します(最高裁平成13年3月12日判決)。

為替取引は経済的に重要な行為であり,為替取引を行う者に十分な信頼がおけなければ利用者は不安定な状況に置かれ,その保護に欠けることになります。たとえば,買主が為替取引を行う者(X)に対して代金を支払ったものの,Xが売主に代金を送金する前に破産してしまった場合,当該代金は支払いが完了していない状態で破産者Xが保有することになってしまいます。

上記のような事態は可能な限り回避する必要があるため,「為替取引」は原則として銀行又は登録を受けた資金移動業者のみが行うことができるとされています(銀行法2条2項2号,資金決済法37条,第2条2項,同3項。資金移動業者が行える為替取引は100万円以下のものに限られます。)。

なお,資金移動業者として登録を受けた事業者は,銀行のように他業禁止規制や自己資本比率規制が課せられない代わりに,債権者に送金すべき資金額に相当する金銭を供託する義務等が課せられています(資金決済法43条)。

2 収納代行サービスは銀行・資金移動業者以外でも実施可能

「収納代行」サービスとは,資金の移動を行う者が債権者を代理して債務者から資金を受領し,当該資金を債権者に引き渡すサービスです。各種コンビニエンスストアがガスや水道料金などの支払いを受け,事業者へ当該料金を送金するサービスが典型例です。

収納代行サービスでは,債務者は債権者の代理人である収納代行サービス提供者に対して支払いを行うので,サービス提供者に資金を渡した時点で支払いは完了することになります。
また,サービス提供者が資金を受け取った後,債権者に資金を渡すまでの期間が短い場合には,債権者がサービス提供者から資金を受け取る前にサービス提供者が破産してしまうという事態が生じる可能性は高くはなく,滞留する資金を保全する必要性も高くはないため,特段の法整備はなされておらず,銀行法や資金決済法上の「為替取引」には該当しないと整理されてきました(「金融審議会金融分科会第二部会決済に関するワーキング・グループ報告」P11~15)。

CtoCプラットフォームサービスの多くは上記のような「収納代行スキーム」を採用し,銀行法や資金決済法の適用を回避しています。

3 法の趣旨を潜脱する「収納代行スキーム」は規制の対象になる?

上記のような「収納代行スキーム」ですが,近時,法の規制を潜脱するような「収納代行」については規制対象とすべきではないか,といった議論がなされています。たとえば,今年7月に公表された金融審議会・金融制度スタディ・グループの報告では以下のとおり指摘されています。

債権者が一般消費者である場合については,一般消費者が「収納代行」 業者の信用リスクを負担することとなり,上述のような実質的に個人間送金に該当するようなものは資金移動業として規制対象とすることが適当である。他方で,その他の個人間の「収納代行」については,今後,実態について把握を行い,資金移動業の規制の潜脱と評価されるものはどのようなものかについて,きめ細かに検討していくことが重要である。

金融審議会・金融制度スタディ・グループ「『決済』法制及び金融サービス仲介法制に係る制度整備についての報告 ≪基本的な考え方≫ 」(2019年7月26日)

上記報告の中では「実質的に個人送金に該当する」にあたるサービスの例として割り勘アプリに言及されていますが,これ以外の収納代行スキームであっても「資金移動業の規制の潜脱と評価されるもの」については規制対象とすることが示唆されています。

たとえば,プラットフォーマーにおいて債権者が受領すべき資金を長期間預かり保管する収納代行スキームについては今後資金決済法の規制対象とされるかもしれません。この場合,資金の供託等により資金の保全を行わなければサービス提供者が破産したときに利用者へ不利益を与えることとなり,資金決済法の趣旨が実現できないたためです。

4 収納代行スキーム採用時の注意点

収納代行スキームを採用するにあたっては,プラットフォーマーが債権者に代わって代金等を回収・受領することを利用規約等に明確に規定しておくことが必須です。しかし,それだけでは足りず,債務者から代金を受領次第,速やかに債権者に代金を送金するような仕組みを採用することも重要になってきます。今後の法改正の動向にも注意が必要です。

2019年9月24日